呉ノ藍元の易断

易(略筮法)により思うままに占断します

農村の晩秋~地天泰

2020年2月27日の占。

 

外食産業「いきなり!ステーキ(以下「いきステ」」。

一時期の飛ぶ鳥落とす勢いもなく、人気売上ともに低下の一途。

昨日、運営会社は、2020年中に74店(直営・委託が48店、フランチャイズ26店)を閉店すると発表した。

急激な店舗増加で、近隣の利用者の奪い合いが起きて、客数が大幅に減っている。

 

そこで

「『いきステ』の今後の経営状況の成り行き」を占って

「地天泰の初爻変、地風升へ之く」を賜った。

 

この卦は三陰三陽の卦。

地天泰で窮まれば、あとは天地否へ向けて衰運を下るのみ。

泰の三爻と四爻にその岐路がある。

右へ行けば、安泰の持続継続、左へいけば衰退一途。

生殺与奪は経営者の能力次第の分岐点。

 

卦辞「小往きて大来る、吉にして亨る」

これまでの繁栄を追想している辞。

遠き他国にも勢力を伸ばし、まさに「大来る、吉にし」て

思い通りに急激発展の道を歩んできた。

 

大象伝に、訓示がある。

聖人は、「天地の道を財成し、天地の宜を舗相し、以って民を左右(たす)く」。

過ぎたるところは制し、及ばないところを補うのだと。

これを旨とすれば、

いきステも泰平の時期を享受できたであろう。

 

そうは言っても、もうしばらく泰の時期を甘受できる。

今回の得爻の初爻に「茅を抜くに如たり。そのたぐいを以てす。往きて吉なり」

今回の閉店の合理化策を言っている。

直営・委託、フランチャイズを茅を抜く如く、

同一の根をもつものを

一気に抜き去る。一気に断行してよろしい、と。

 

この爻が変じて地風升。

卦辞「元いに亨る。用って大人を見る。恤(うれ)うるなかれ。南征して吉」

この合理化は大いに成功する。ただし、見識ある人物を抜擢する必要がある。

会社の生死がかかわる一大事。

のるかそるかを任せられる人物を任用しなければ、この窮地を突破するのは至難の業。

そうした人物が支援してくれるなら、心配は無用。

南、つまり離=明智を目指せば好結果。

将来の計画を綿密にたて、今まで以上に知略に富んだ戦略で進めば、再興の余地もあろう。

 

だが、升の互卦は雷澤帰妹、錯卦は天雷无妄。

機を逸してはならない、しかも、タイミングがよくても、无妄が控える。

人知を超えた流れが待っている。如何ともしがたい。

 

合理化策が奏功し、無事に乗り越えらると、次は立て直し。

既存店の採算が向上してきたら、次は出店拡大。

都市部のみだけでなく、

地方に目を向けて、活路を見出すことも必要であろう。

安易な方法に頼ることをせずに

剛毅果断に経営していくことが重要である。

これを二爻爻辞では

「荒(こう)を包(か)ね、馮河(ひょうが)を用(もち)い、遐(とお)きを遺(わす)れず」という。包容の大度量もあって、人気を博し、遠い地方の住民も、食べにやってくる。冷たい氷の張った河川を渉るように、地道に丁寧に着実に前進していくのである。

 

苦しいとはいえ、泰平の時期。安寧である。

上昇のきっかけをつかんだからと、

堕落するのではなく

常に過去の衰退を反省し、

謙譲謙遜の気持ちをもって

何事にも誰に対してもおごり高ぶらずに

お客様すべてに一様に対応することを心がければ

過不及のない理想的な経営ができるであろう。

これを

「朋(ほう)すること亡(な)くば、中行(ちゅうこう)に尚(かな)うことを得(え)ん」という。

 

そして、この上昇機運も、転換する時期がくる。

三爻のとき。

泰中の泰が窮まり、機運の変遷を示す。

「平かなるものとして陂(かたぶ)かざることなく、往(さ)るものとして復(かえ)らざることなし、艱(くる)しとて貞しければ咎无(な)し、其の孚(まこと)を恤(うれ)うる勿(なか)れ、食(しょく)に于(お)けるがごとく、おわりには福有らん」

 

やっと事業経営も落ち着いたと思う頃、泰中の否がやってくる。

それは、

平らなものがやがて傾き、

往く者がやがてはかえり来るようなもの。

 

もともと消長盈虚の義は、天道の自然にして、人力の及ぶところではない。
しかし、よく天地の道に則り、よく艱難労苦して、自ら反省して修める功を績み、欺くことのないように徳を盛んにして、貞正にして道を践み行うときには、そうせずに自然に任せているときよりも、泰のときを永く持ち守るのであって、これこそが否のときに行かないようにするための秘訣でもある。そして、このように自己を慎むときには、その咎も免れるのである。

だから、「艱しとて貞しければ咎无し」、という。

 

このような転変の時運に当たっては、

自分は正しく誠を尽くしていても、他人からは、その誠心を信じられないものである。
それを覚悟し、憂い悶えることなく、さらに誠を尽くして事に当たるのがよい。このようであれば、やがてその誠も通じ、ついには福を得るに至るものである。
要するに、今の状況は、日食や月食のようなものである。日食や月食のときは、しばらくは陰晦になったとしても、時が過ぎれば必ずまた明るくなる。

だから、「其の孚を恤うる勿れ、食に于けるがごとく、おわりには福有らん」という。

誠意をもって接客すれば、お客様の心に通じ、その人気も維持できるというもの。

 

しかし、機運がついに泰中の否に移ってしまうと。

経営内部も混乱を始める。

四爻「翩翩(へんへん)たり、富まざるをもって、其の鄰(となり)を以(ひき)ゆ、戒(いまし)めざれども以(も)って孚あり」

内部の者が、時を得て乱を起こそうと準備をしている、それを鳥が飛び立つ前の羽繕いしている様子(翩翩たり)に例えている。

大量離反や大量退職など人材流出により、人材不足・人手不足に陥るであろう。

 

このような状態になると経営再建は難しくなる。

倒産もありうる、それが惜しければ身売りも考えなくてはならない。

五爻には「帝乙(ていいつ)妹(いも)を帰(とつ)がしむ、以(も)って祉(さいわい)あり、元吉(げんきち)なり」と。

会社を支援会社に売却することで、従業員やお客様に少なくとも迷惑はかけない。

最低限の幸いはある。そして、それが現状できる最善の策であろう。

 

しかし、身売りした後、「いきステ」の看板は残念ながら残らないであろう。

上爻に「城隍(ほり)に復(かえ)る、師(いくさ)を用(もち)うる勿(なか)れ、邑(ゆう)自(よ)り告命すとも、貞(かた)くすれば吝(はずか)し」とある。

 

隍は土を掘って成るもので、

その掘りだした土を用いて、城を築く。
今、泰の時運はすでに去り、否の気運がまさに目前。
それは、高く堅く築かれた城が、忽ち深く低い隍に戻ってしまう如く。

城も隍も無くなってしまっては、根拠を失い、再興は困難。

再度、準備を整え、打って出ることはもはや無意味である。

人気も凋落し、そのブランド価値も失墜した状況では

再度の挑戦ができようか。

本社から、事業終焉の最後通告が出されたならば、

過去の栄光にしがみついていては、何の前進もない。

ここは潔く後退しなければ、未来永劫、悪評は消え去らない。

これは吝の極み。

天運尽きたと進退の機を感じ取ったならば、

臨機応変に対応するのが

残された道である。

 

三爻と四爻、その別れ道。

迷わないことを祈るのみ。

 

断了